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社会問題としての「子どもの貧困」
- 本ページをご覧いただきありがとうございます。
東京の世田谷で、まんぼう子ども食堂の運営をしております、代表の能美 弓子と申します。
突然ですが、「子ども食堂」っていつから始まったかご存じでしょうか?
歴史はとても新しく、2012年に大田区のとある八百屋さんが、近所の食事に困っている子どもたちに、夕ご飯をふるまったことからスタートしています。
それからわずか10年強で、全国に7,500ヵ所以上の子ども食堂が出来ており、今も増え続けています。
2022年の厚生労働省の調査では9人に1人の子どもが貧困にあえいでいる、とのデータもありますが、一言で「貧困」と括ってはいけない現状があります。
経済的な貧困もさることながら、親が仕事や病気などの理由から育児放棄をしてしまい、裕福なはずの家庭でも子どもは当たり前の食事すら食べられない、という「心の貧しさ」からくる貧困も存在します。 -
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まんぼう子ども食堂を作ったきっかけ
- 私は以前、たくさんの15、6歳のスタッフと一緒に仕事をしたことがあります。
その時に彼らを通じて、彼らが通ってきた、また現在おかれている劣悪な環境、生活状況を目の当たりにし、日本の貧しさと闇にショックを受けました。
私がやるべきことはそういう状況下におかれている子どもたちに、人生を絶望することなく、少しでも未来に希望を持てる時間を提供できる場を作ることだと強く思い、まんぼう子ども食堂を立ち上げました。
まんぼう子ども食堂は「行きたいところ」「楽しい時間」「呼べば応えてくれる場所」でありたいと常に思っています。 -
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まんぼう子ども食堂をはじめて見えてきた「貧困の正体」
- 私自身、実際にはじめるまでは、子どもたちが抱えている問題の大きな部分は経済的な問題であろうと考えていました。
しかし、実際には経済的な問題がそこまでなくとも心の問題、家庭を含めて環境の問題、学校の問題、人間関係、病気など、さまざまな悩みを抱えてよりどころを探している子どもたち、保護者がたくさんいらっしゃることを思い知らされました。
中でも、経済的には裕福なものの、いわゆる「ネグレクト」に類するものも含まれており、子どもたちのたどり着く先は「孤独」です。
しかも、集まってくる子どもたちの貧困の原因を聞いてみると、経済的な貧困によるものは全体の20%程度で、大人たちの心の問題からくる精神的な貧困のほうが80%ほどと圧倒的に後者のほうが多いのです。
大人の孤独も社会問題として提起されて久しいですが、その余波が子どもたちまで影響が及んでしまっている現実には衝撃を隠しきれませんでした。
そういった背景もあり、まんぼう子ども食堂はそういう誰でもが「歓迎される」「行くのが楽しみ」な、束の間でも心を解放できる場所でありたいと考えています。 -
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まんぼう子ども食堂で知った真心の輪
- 子ども食堂をはじめたいと考えたのはだいぶ前になりますが、諸々の準備や下調べなどをしているうちにコロナ禍となり、スタート時期を遅らせました。
私が実現したかった子ども食堂は「子どもたちが笑顔で孤独を忘れられる場所」にしたいと考えており、それには会食スタイルでの開催が一番、と考えていたためです。
いざ本格的に始動、という段階になっても、本当にボランティアさんが集まるか、参加者が集まるか全くわかりませんでした。
しかし、心ある人はいらっしゃるもので、スタートしてみると地域での協力体制もあり、順調に滑りだすことができたのです。
それどころか、スタート時に借りていた会場が2ヶ月で定員オーバーとなり、地域の特別養護老人ホームからお声をかけていただき、広い会場に移転いたしました。
広い会場のおかげでたくさんの参加者を迎えることができるようになりました。
このように、私も、ボランティアのみなさまや地域のみなさまの方々が次々とお力添えくださったおかげで、自分の目指していた活動をはじめることができました。
普段は表に出さなくとも、具体的に動き出すと心ある方々も合わせて動き出してくださることを実感しています。 -
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まんぼう子ども食堂に込めた願い
- 運営者の立場から申し上げると、子ども食堂を何よりも継続することがミッションと考えております。
なぜなら、マクロな視点で見た場合では子ども食堂自体の数もまだまだ足りないからです。ミクロな視点で見た場合でも、一か所を運営していくだけでも、人も物資も資金も十分とは言えません。
参加いただいた方たちの「大好きな居場所」となり、できるかぎり幸せな時間を提供する場所を一つでも多く作っていきたいと考えています。
一方で、私と同じような思いの方々がどんどん集まって、バトンを渡して支援の輪を広げていけるようにならなければなりません。
ボランティアの方たちにも特別な経験、生活の中で張り合いのある時間を過ごしていただくことで、周りの人も巻き込んでいただいて輪を大きくしていけたら、とも思っております。
そして、法人化していない個人グループですが、個人でも大きな社会貢献ができること、個人でも企業に興味を持っていただき、感銘、賛同、支援していただけるように活動の域を広げています。
まんぼう子ども食堂からほかの子ども食堂へ、支援の輪を大きくしていけるように活動しています。
また個人グループでも企業やたくさんの方々からご支援がいただけて、円滑に運営ができるというような形でロールモデルになっていけるよう、世界に向けて活動していきます。 -
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日本の未来を担う子どもたちのために
- 温かい食事、明るい空気、幸せ感を感じられる場所…、みなさまにもそういう場所がおありかと存じます。
ただ、これまで申し述べてきたとおり、「貧困」とはとても厄介なもので、経済的・物理的な要因と、心の有り様からくる要因に分かれます。
逆説的なもの言いになってしまいますが、子どもたちが満ち足りた生活を送っていれば、「子ども食堂」は必要ないのです。
現実は残念ながら、「子ども食堂」がさらに必要な社会となってしまっています。
「子ども食堂」は「貧しくて食べるもののない人の行く駆け込み寺」のようなイメージがありますが、そのようなものではありません。
むしろ、一昔前に当たり前のようにあった「ご近所さん」のような地域コミュニティの中心地の役割を担っている、というほうが近いと感じております。
そういったことから、何よりも重要視しているのは、コミュニケーションが行き交う心のこもった場所作りをしよう、ということです。
また、ありがたいことにさまざまな国からのボランティアスタッフが毎回たくさん参加してくださっていて、グローバルな環境も体験していただけます。 -
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「子ども食堂」全体が求めていること
- とはいえ、私たちのまんぼう子ども食堂をはじめ、法人化していない子ども食堂が置かれている環境は非常に厳しいもの、と言わざるを得ません。
一つはご想像のとおり経済面です。行政から下りる助成金を活用してはいますが、継続運営していくための必要経費を賄うには全く足りないのです。
子ども食堂を運営していくためにはそもそもの食材費もさることながら、フライパン、鍋、ガスコンロなどの調理器具をはじめとした備品代も膨大にかかります。
もう一つはさらに深刻な問題で、それは人手の問題です。助成金を受けるためには交通費すら支給できない、完全な善意のボランティアスタッフで構成する必要があるのです。
そして、平日の夜間にお手伝いいただける方となると、どうしてもご高齢の方に頼らざるを得ないのが現状です。
まんぼう子ども食堂では、毎月2回隔週水曜日を開催日としており、毎回140~150人程度の参加者が来られていて、ボランティアスタッフの方は平均15~20人で回しております。
回数を増やそうと思っても、スタッフの人数の兼ね合いでなかなか難しい状況が続いています。
短期的にはまずはまんぼう子ども食堂を安定的に運営していくことにご支援を充てさせていただく予定ですが、中長期には私たちが子ども食堂に携わる方々のハブ役となり、同様の問題を抱える同志の方々に手を差し伸べるだけの物心両面において、余裕を持てるようにしたいと思っております。
そして、最も深刻な問題である人的資源の面に関しては、一般的な企業様の社内ボランティア活動の範疇に「子ども食堂のスタッフの手伝い」が当たり前に入ってくるよう、活動の普及に精力を注ぐとともに、一つでも多くの企業様と子ども食堂とをマッチングできる役割を担えるようになっていきたいと考えております。 -
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さいごに~子どもの未来の一筋の光を~
- 私たちの活動は今は小さなものではありますが、この機会をきっかけに、子どもたちが孤独に陥らないような、保護者の方も孤立しないような、そんな優しさに溢れた場を広げるお力添えをいただけると本当にありがたいと思っております。
みなさまの心が、子どもの未来の一筋の光となります。
どうか、あたたかなご支援のほど、よろしくお願いいたします。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。 -
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